目に見えるアートを造り出す彫刻家

保養とアートの宿 板室温泉大黒屋 坂井田 武志

保養とアートの宿 板室温泉大黒屋 坂井田 武志

1980年1月24日名古屋市生まれ。高校時代に彫刻家・原祐治氏が経営する原美術研究所へと通いはじめる。師事する事7年を経て金沢美術工芸大学美術科彫刻専攻に入学。同校大学院博士後期課程満期退学。9年間自主勉強に専心する。第6回大黒屋現代アート公募展で作品名「静寂と喧騒と」で大賞受賞。2012年10月1日より30日まで大黒屋サロンにて個展を開催するにあたり、現在は石川県から那須塩原市に移り住み、大黒屋敷地内にて公開制作中。大理石を扱った表現を主としている。

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現在のあなたの仕事内容を教えてください

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簡潔に言えば作成した作品で生計を立てていくことです。まさに言うは易しく行うは難しの職業ですね。ご存知のとおり、そもそも職業としては認められがたい職種なので、僕は未だにアーティストの仕事とはどのようなものであれば良いのか、ということを考えています。誰かに望まれてなる職業でもないわけですから。何をしていけば成功するのかということも一概に言うことができません。身の回りに起きる出来事を全部、一から反省しながら、自問自答の毎日です。アーティストとして自分ができる事はなんなのかって。アーティスト個人個人の仕事を見たり、表現を見たりしていただければ、みんな明確に異なることを理解することができると思います。なぜなら予め決められた内容をこなしていくのではなく、内容そのものや、内容それ以上のものを目指して、人それぞれが築いていく仕事だからです。内容が入る器から創造していく。当たり前なことをもっともっと当たり前に感じられるような仕事です。とっても現実味のある仕事です。そもそも自分の手でつくった作品は嘘をつきませんから。

この仕事に“やりがい”を感じる時はどんな時ですか?

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アートは分からない、難しいということを度々耳にします。こういった声が聞こえてきたときにやりがいを覚えます。燃えます。なぜなら、分からないということは、それはその方にとって新しい体験であるという可能性をも含まれているということですから。アートの分からなさっていうのはハッキリしているんです。それは個人の問題で一番の問題は、自分の経験は他者がまったく同じものとして経験することができない。こういったところから表現のジレンマは生まれていきます。アートは目に見えないもの、分かりにくいものも多く扱います。それを目に見えるようにするのが仕事です。精神に価値を見出して、形にしていく仕事です。僕自身、これからどうなっていくのかは分かりません。だからこそ、分からなさに向かって際限なく努力するぞって腹をくくるんです。僕と出会ってくれた人達、これから出会えるかもしれない人達、近くにいる人とも遠くにいる人にでも平等にコミュニケーションをとることができるのがアート作品の魅力のひとつだと考えています。大切なこと、感じたことを一つ一つ丁寧に伝えていくこと。たくさんの人にアート作品を見ることにやりがいを感じてもらえたらと思います。

お店(施設)のオススメを教えてください

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公募展がきっかけで大黒屋さんに制作の場を与えて頂いておりますので、大黒屋さんのオススメを伝えたいと思います。一昔前の自分なら、ずばりアートだと言い切ってしまいそうなところなんですが、大黒屋さんの看板には「保養とアート」と書かれています。一人ぼっちの特別なアートなんてありません。そもそもアートは必ず何かと寄り添っています。大黒屋さんではその寄り添い方が、どちらか一方に傾倒しているわけでもなく、媚びることなくお互いに自律して共にある。つまり、丁度いい湯加減である。それは温泉にも言えると思います。私も毎日お世話になってます(笑)。そのゆったりとくつろげる空間から、自然やアートを振り返ることは都会の喧騒から離れて等身大の目になれる空間でもあります。素直な等身大の目に気がつくことができる気持ちのいいコミュニケーションの場です。それは僕が目指したいものでもあるので大変勉強になります。まるで大黒屋さんそのものがアート作品ですよ。人によって気がつくものが様々です。僕にとって感謝の気持ちに気づかせてもらえる場です。

仕事を通して、あなた自身の今後の目標を教えてください

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作品について語られることは多々あっても、職業として語られることは非常に少ない職種ですので職業としての理解を得たいですね。おかしな話ですが、アーティストという職業について美術学校で学んだことはありません。僕は好きが高じて、尊敬したいアーティストに出会えたからこそ、現在の道を選択しました。きっと誰もが歩いていく道です。これからアーティストを目指していく人たちのためにも、アートに興味を抱いてくださる人のためにも、もう少し道を掃除していきたいです。アーティストとは決してファンタジーな職業ではなく、リアルな職業として見るために、僕は指針になりたいです。そして作品を残したいです。しっかりとした自覚と責任を持ってアーティストという職業をもっと明るくしたいです。そこからはじめて、アートとは何であるのか?という問題に応えていきたいと思います。

あなたにとって、那須とはどんな場所ですか?

初めて来た時はほんのりと雪が降っていました。とっても広いところだなというのが第一印象です。現在は大黒屋敷地内にオープンした南の館のすぐそばの小屋で、石粉に塗れながら制作しています。天気が良い日はお散歩している人がよく通りかかります。観光や保養を目的にして訪れた方がほとんどなので、一期一会な出会いなのかもしれません。僕の仕事は住宅街ではできませんし、物珍しい職種です。大体のアーティストは制作中に人に会う機会はありません。僕が行わせて頂いているのはレジテンス、つまり滞在制作と呼ばれるものです。アートと社会との距離を考える為のスタイルでもあります。大黒屋さんに始まり、出会った方々の懐の広さに感謝しています。環境の広さと心の広さは良く似ているって思ってます。環境が広ければ、心も広げられる。心が広ければ、環境も広げられる。そういった想像力を豊かに穏やかに感じさせてくれる場所です。なかでも板室の自然が大好きです。人からも自然を感じられる場所です。はじめて避暑地という言葉の真意を教えていただいた場所でもありますね。

NasuWorker 読者(那須に興味を持っている方)へ一言

こちらへ来て半年足らず、思いのほか制作に追われて満足に足りるほど那須を知りません。板室温泉周辺をメインに生活しています。行きたいところ、見つけたいところがたくさんあります。那須には名前の無い景色にだって目を奪われるくらい素敵な場所がたくさんありますね。季節が変われば新しい発見もあります。自分だけの特別な場所を切り取りたくなるようなところです。現在は紅葉を楽しみにしています。あと美味しい旬のお野菜(笑)。最後になりますが、本年度10月より一ヶ月間、大黒屋にて坂井田武志展を開催いたします。入場料無料です。先日、大黒屋敷地内に作品を設置させて頂きました。こちらもどうぞご高覧ください。

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